歪ノ櫻(イビツ ノ サクラ)
夢現(ユメウツツ)
ああ、とても暗い。


何も見えない。


これは、夢?


私はいつの間にか眠ってしまったのですね。


ですが、今日は鬼の姿はありません。

どこかへ行ってしまったのだと、思っても良いのでしょうか。

暗闇のままではありましたが、私は安堵しました。


不意に、私の背後、着物の裾を引かれる感触がありました。


振り向くとそこには私の着物の裾に縋る二匹の鬼がおりました。


小さな子供くらいの大きさ。


動くことの出来ない私は、見たくもないのにその鬼の姿を間近で捉えてしまいました。


鬼が纏っている炎は自らの身を焼いていました。
もう片方の腕を私のほうへ伸ばしてきます。


その動きで焼けて爛れた肉片が、爆ぜる音を立てながら剥がれ落ちました。


それでも構わず両手で私の着物を掴むと、尚も私のもとへと這い登ろうと、爛れて崩れ、形を無くしかけている手で幾度も空を掻きながら迫って来ました。
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