歪ノ櫻(イビツ ノ サクラ)
ゆっくりと近づく顔も炎に包まれ、目はとうに焼け落ちてしまったのか、目のあるはずの場所にはぽっかりと空虚な暗闇がありました。


何かを訴えるように何回も開かれる大きな口の動きに合わせて、頬の肉も焼けてぼろぼろと削げ落ちていきます。


そのおぞましく、醜い姿を私はただ見つめることしか出来ず、何度も何度も早く消えてと心の中で叫んでいました。


やがて、鬼を纏う炎が私の着物にも移りました。


逃げることも目をつぶることも許されぬまま、私はこの醜い鬼達と共に焼け死んでしまうのでしょうか。


どうして私ばかり、辛い思いをしなければいけないのでしょうか。


どうして私なのでしょうか。

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