歪ノ櫻(イビツ ノ サクラ)
私の村はとても小さく、

沢山の桜の木に囲まれて、まるで山の中に隠されているような場所にあります。

酷い大雪や暑さに見舞われることはありませんが、嵐が来ると山頂からの土砂崩れや地滑りが起こり、その度に家や田畑を失いました。


嵐が来なくとも土が良くないのか上手く作物が育たず、私が覚えている限り豊作という言葉を聞いたことがありません。
気候が安定していても収穫できる米や野菜は、私たちが食いつないでいくのに何とか足りる程で、村の外まで売りに行ける余裕などなく、場所柄だけではなく、名実共にこの村は閉ざされていました。



けれど、この村には一つだけ不思議なことがあるのです。
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