吐き出す愛


 直接会ったことはないけど、写真を見せてもらったことがあって。
 いわゆるイケメンと言われるような、とても整った顔立ちの人だった。でも、チャラい雰囲気はない人の良さそうなイメージ。

 どうやらそれは彼氏さんの魅力らしくて、モテる体質だとちえりから聞いている。

 普段から告白されることもたびたびあるらしく、デートの最中に逆ナンをされてしまうなんてこともあるみたいで。

 どうやらちえりは、それが気に入らないらしい。愚痴や不満、ときには不安もよく聞くほどだ。

 ……まあ、好きな人が女の子にモテたらいい気分なんてしないよね。


 ちえりは私がからかうのを止めた隙を狙って、一哉くんに返事を打っていた。
 必死な表情には時折笑みが混ざり、一哉くんのことを思い浮かべているのがすぐに分かる。

 本当にちえりは、一哉くんが大好きなんだなあ。


「……ちえりはさ、いつ一哉くんのことが好きって自覚したの?」

「えっ、どうしてそんなこと聞くの?」

「ちょっと、恋する気持ちを参考にしたいの。ねえ、いつ好きだなあって分かったの?」

「答えにくい質問だねー」


 唐突な質問にちえりは最初こそ戸惑っていたもの、首を傾げながらもうーんと考え出す。
 嫌な顔一つせずに真剣に向き合ってくれるのは、ちえりの良いところだと思う。


「いつ好きになったっけなあ……。正直、覚えてないかもしれない。一哉は幼馴染みで小さい頃から一番近くに居た男の子だから、結構親近感のある存在でさ。気が付いたら大切っていうか、居なくちゃダメな存在になってたかな。その気持ちがいつの間にか、恋心に変わってた気がする」

「いつの間にか、ね……。人を好きになる瞬間って、そんなに曖昧なものなの?」


 分からない。

 あの頃の彼も、小山くんも。
 私と関わった時間はとても短かったのに、それでも私を好きだと言っていた。

 けど、そんな短期間の間に、人を好きになることがあるの?

 そんなに、相手のことも知らないのに?


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