吐き出す愛


「……うん、まあ。有川くんも私が嫌がってるの分かってて近付いてこないし、きっと今の距離感がちょうど良いんだよ」


 そう言い切ってカバンのチャックを締める。マフラーを巻いてから口を開くと声がくぐもった。


「……ねえ、優子。ずっと気になってたんだけど、有川くんが私に話しかけてきた理由に、優子が関わってたりする? 普段大人しい女子には話しかけない有川くんが私にだけ話しかけたのが、何かすごく引っ掛かるの。優子もやけに、有川くんと私を関わらせようとしてくるし……」


 あの日から、ずっと疑問に思っていた。有川くんが、どうして私に声をかけたのか。

 有川くんは友達が多いけど、今まで誰彼構わず仲良くなろうとしているような感じではなかったはず。隣の席になった人には絶対声をかけて仲良くなろうとしていたとかは、たぶんしていなかったと思うんだ。

 ましてや私みたいな有川くんとはタイプの違う女子は同じクラスに何人か居るけど、彼女たちにわざわざ話しかけている姿なんて一度も見たことがない。

 だからきっかけがあるとしたら、絶対に優子だと思ったんだ。彼の幼馴染みの優子が、何かしら関わっているんじゃないかって。

 だって最近の優子、やたらと私を有川くんに接近させようとしてくるし。


 疑うように視線を向けると、気まずそうに優子の瞳が動いていた。それは完全に、肯定の印だ。

 追い詰めるようにじっと見つめれば、優子は観念して口を開く。


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