吐き出す愛


「あー……、えっとね。あたしから持ち出したわけじゃないんだ。でも智也に、佳乃のことについて聞かれたことはある」

「私についてって、どんなこと?」

「普通にどんな子なのかーとか、性格とかかな。何か佳乃にすごく興味があるみたいで、色々リサーチしてるみたいだった」

「何それ……。どうして有川くんが私なんかに興味持つの? それで優子は何て答えたの?」

「何の理由で聞いてきたのか、あたしにはちょっと分からないなー。まあ、佳乃は智也と違って真面目な良い子だってことは言っておいた。智也とはタイプが違う子だって言うのは伝えたから、まさか話しかけるとはあたしも思ってなかったよ」

「そう、なんだ……」


 優子の話を聞いても、いまいちすっきりすることは出来なかった。
 何がどういうふうになって、有川くんは私のことを知ろうと思ったのだろう。

 肝心なことが分からず仕舞いで、ついつい溜め息を溢す。
 そんな私を見兼ねて、優子は明るく言った。


「まあ、そんなに気を落とさないでよ! あたしは智也が佳乃に話しかけたこと、ある意味良いチャンスだと思ってる。ほら、自分の世界を変えるチャンスだと思えば良いのよ!」

「他人事だと思って……」


 恨めしい気持ちで優子を見るけど、逆に励ましのつもりで肩を叩いてくるだけだから、何一つ上手くいかない。

 優子は有川くんの不可解な行動をポジティブに捉えていたから、今までやけにお節介をやいていたみたいだ。
 ネガティブにしか捉えられない私にとっては、完全にありがた迷惑だけど……。


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