吐き出す愛






 以前から有川くんは目立つ存在だった。

 だからよく視界に入ってきたけど、ここ数日でさらにその数が増えたように思える。

 それはやっぱり、1週間前のデートがきっかけのようにも感じていて。

 私の中に、有川くんをすぐさま見つける探知機が組み込まれたのかと思うぐらい、彼を見つけやすくなった。


「……あ」


 茶髪頭の見慣れた姿。私の中のレーダーが早くも反応する。
 放課後に図書室を訪れたら本棚の脇にそれを発見して、思わず声が漏れた。

 静かな空間に響く声に反応して、視界の真ん中に留まった人がこっちを見る。ふわりと笑顔を向けられた。

 入り口から一番近い本棚に向かって歩く。


「佳乃ちゃんじゃん。何か探し物?」

「うん。入試の過去問題集を借りようと思って。有川くんも、受験関係?」


 有川くんがさっきまで視線を向けていたのは、入試問題や一般常識の問題、それから各教科の参考書を取り揃えてある本棚だった。ここに用事があるとすれば大体、受験勉強のためだったりする。


「まあ、そんな感じ。先生にここの参考書を見とけば入試はギリギリ大丈夫とか言われたからさ、一応見に来たんだよ。でも実際、俺からしたら参考書の内容を理解するのだけでもギリギリだっつーの」


 有川くんは本棚から抜き出した参考書をパラパラと一通り捲ると、すぐに本棚に乱雑に戻してしまった。
 うんざりした表情をしているので、内容が相当難しかったらしい。

 本の列からはみ出した背表紙には、“基礎から解説!”という謳い文句が書かれていたけど……。

 小さく苦笑いしながら、目的の問題集を探す。分厚いそれは本棚の最上段にあった。


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