吐き出す愛
「以前に比べたら……信じてもいいかなって思えるようになったよ」
「ふむふむ」
「でもまだ……それだけ、かな」
「はあ!? それだけって何よ!」
優子の興奮した声に、クラスメートが一瞬だけこちらに注目する。
すぐに視線は逸らされたけど、みんなが聞き耳を立てていそうでゾッとした。
さすが……幼馴染みかもしれない。
優子も悪い意味で注目を集めるのが上手くて、それは誰かさんとそっくりだ。
掠れてしまうほどの小声で訴える。
「ちょっと優子、もう少しボリューム下げて話そうよ」
「ごめんごめん。今のはミスった。……っていうか、マジで何なの? それだけって。智也からは“佳乃ちゃんとめっちゃ良い雰囲気だった!”って、うざいくらいのろけられたんだけど?」
唇をへの字に曲げながら尋ねられるけど、その表情になりたいのは私の方だった。
有川くん、一体何を優子に話したのだろう……。
あの日の出来事をどう解釈したら優子に伝えた説明通りになるのか、さっぱり分からない。
いつも思ってたことだけど、優子に話された内容は有川くんによってかなり美化というか、都合の良い形になるように有川くんの心情が織り交ぜられているみたいだ。
何だかもう、言葉より先に溜め息ばかりが出てくる。
「進展を期待してたみたいだけど、本当にそれだけだよ。有川くんが言うような良い雰囲気とか、そんなものは全然ないから。ただ勉強して、一緒に帰っただけだもん」
「……マジで?」
「うん、本当に本当。こんなことで嘘吐かないし」
いつまでもしつこく確かめてくる優子に、半ば呆れながら険しい顔で事実を告げる。
するとさすがに納得してくれたみたいで、残念そうに身体の力を抜いていた。
ふぅっと息を吐くと、私の肩に乗っかっていたものも下りる。