吐き出す愛
優子は腕組みをしてしばらく何かを考えたあと、少し真剣さを帯びた声で言った。
「……でもさ、信じられるようになったってことは、もう返事も決められるようになったんじゃない?」
「うーん……。どうだろう。まだ、決められない気がする」
「だけど佳乃、告白からもう1週間以上経ってるんだよ? そろそろ決めた方が良いんじゃない? 智也もそれを望んでるだろうし」
「……そうだよね。有川くんを待たせるのは悪いもんね」
有川くんは私に、いつまでに返事を考えてくれとは言わなかった。今日に至るまでも、一度もそれを要求されていない。
だから私が彼を信じられるようになるまで待ってくれるのかなと思っていたけど、優子の言葉を聞いてそれは違うような気がした。
優子がこれだけ毎回私に返事を決めたのかと確認してくるのは、きっと知っているからなんだ。
……有川くんが私の返事を、欲しがっていることを。
もうすでにだいぶ有川くんを待たせているのかと思うと、胸が重くなった。
早く返事をしなくちゃと焦れば焦るほど、答えを出せていない心が悲鳴を上げる。
だからつい、本音が漏れた。
「好きって……どんな気持ちなんだろう」
「どうしたの、急に」
「急にじゃないよ。ずっと考えてたの。有川くんに返事しなくちゃいけないのは分かってるんだけど、好きって気持ちが分からないからどうやって返事を決めればいいのかが分からないの」
有川くんと一緒に下校した金曜日から、休日を挟んだ今日まで。
ずっとそればかり考えていたのに、結局答えは出ないままだった。
「有川くんは私の全部が好きだって言ってたけど、そんなの私には分からないの。何を基準にしたら、好きって言えるんだろう……」
堂々巡りの悩みに、聞いていた優子も難しそうに顔をしかめていた。