吐き出す愛
「有川くんと居ると、楽しいと思うこともあったよ。ドキドキすることも、一応あった気はする」
記憶にあることを素直に伝えれば、優子はニッコリと笑った。優子の笑顔にはだいたい嫌な予感が付き纏うので、今回も例外ではないだろう。
「それならもう、答えは決まってるね。佳乃は智也のことが好きなんだよ!」
「いや……。どうしてそれが好きに繋がるのか、よく分からないんだけど」
案の定予感が的中していた優子の言葉に苦笑すると、力のこもった声で力説された。
「繋がるに決まってるでしょ! だって好きって、そういうものだもん。一緒に居て楽しいって思えたり、ドキドキするってことは、その人が好きな証拠なの!」
……そういう、ものなのかなあ。
優子は好きって気持ちが分からない私に必死にそれを説明してくれているのだろうけど、その説明を飲み込むことは出来なかった。
だって、一緒に居て楽しいと思うのは友達だって同じだ。
それに私が有川くんにドキドキしたりするのは、恋とは違う気がする。単に私が男の子慣れしていないから、そう感じているような気がするんだ。
だから結局、優子の説明による好きって気持ちと、私の有川くんへの気持ちは一致しないように思えた。
「良かったね、佳乃。これで智也に返事が出来るじゃん」
「そう、だね……」
「タイプは違うけど、智也と佳乃はお似合いだと思うの。だから2人が付き合うようになるなんて、あたしすごく嬉しいよ!」
「……」
まだ有川くんに返事をしていないというのに、すっかり一人で納得して舞い上がる優子。
その笑顔が、どこか遠くに感じる。
裏腹に私の心情はもやもやしたままで、うやむやに返事をしながら別のことを考えていた。