さみしがりやのホットミルク
「佳柄からも、逃げたのは……俺の家のことを知ったら、絶対に、佳柄がこわがると思っていたから。それに、巻き込んじゃいけないとも、思ってた」

「………」

「だから……結局、あんなふうに、言い逃げみたいなことをした。離れなきゃいけないのはわかってたけど、全部隠したままにしておくのも、申し訳なくて」



じっと俺のことを見上げている佳柄と、逸らすことなく目を合わせる。

涙で濡れた頬へ、そっと、触れた。



「でも……ほんとは佳柄のこと、欲しくて欲しくて、たまらなかった」

「……ッ、」

「触りたくて、自分のものにしたくて……一緒に過ごしてる間中、ずっと、おかしくなりそうなくらいだった」



頬に触れた親指で彼女の目尻をなぞると、くすぐったそうに、目を細める。

そして今度は佳柄の方から、俺の頬を、両手で包んだ。



「……オミくんのばか。あたしのこと守るために、カッコばっかり、つけちゃってさ」

「………」

「オミくんがあたしのために、いろいろ考えてくれてたのは、わかってるもん。……けど──、」
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