さみしがりやのホットミルク
けど、と。

そう言って佳柄は、涙目のまま、微笑む。



「あたしオミくんから、1番大事なこと、聞いてない」

「……、」

「もっと、わかりやすい言葉で……言って」



……ああ、そっか。

いろいろ、この子には、聞いて欲しいことがあるんだけど──これが1番、本当に、伝えたいことだった。


そっと、こわれものを扱うように、彼女の両手に自分のそれを重ねる。

きゅっと握りしめながら、俺もつられて、笑みを浮かべた。



「……すきだよ、佳柄」



一瞬また泣き出しそうに彼女の顔がゆがんだかと思うと、勢いよく、首に抱きついてくる。

それを受け止めると、すぐ耳元で、小さくすすり泣く声が聞こえた。



「……あたしも、」



ささやきとともに、佳柄が少しだけ、顔を離す。

今まで見てきた中で1番しあわせそうに、彼女はやわらかく笑った。



「あたしも、……オミくんが、だいすきだよ」

「……ッ、」



その表情と言葉に堪らなくなって、俺は気付けば、くちびるを重ねていた。

舌先でなぞると、応えるように、少しだけ口が開けられる。

漏れ出る甘い声を聞きながら散々その咥内を堪能した後、名残惜しく、くちびるを離して。

そしてとろけた表情の佳柄を抱えたまま、俺はその場に立ち上がった。
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