さみしがりやのホットミルク
──うし、こんなもんでいいだろ。

しばらく無言でドライヤーをあてて、佳柄の髪が乾いた頃。

スイッチを切ろうとした俺の胸に、ぽすん、と、彼女の後頭部が寄りかかってきた。



「は……、」

「……すぅ」



思わず硬直して視線を向けてみると、佳柄のまぶたは完全に閉じられていて。

なんとも心地よさそうに、寝息をたてている。



「……マジかよ……」



無意識に呟いてみても、彼女から返事が返ってくることはない。

スイッチの切れたドライヤーをそっと床に置いて、俺は呆れたように、あどけない彼女の寝顔を見下ろした。


……普通寝るか、この状況で。

もしかして、今日の彼女のテンションはこれが通常運転かと思ってたけど……俺が来たことによって、実はいつもよりも、ハイになってたとか?

それで疲れて寝ちまうとか、マジで子どもかよ。


しばらく、彼女のおだやかな寝顔を眺めていたけれど。

俺は佳柄の背中とひざ裏に手をまわすと、そのまま抱きあげる。

そうしてベッドの上にそっと彼女を降ろし、足元にたたんであった掛け布団をかけてやった。

すると佳柄は意識がないまま寝返りを打ち、うつぶせで顔をこちらに向けるかたちになる。
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