さみしがりやのホットミルク
……俺みたいなのが、同じ部屋にいるっていうのに。なんなんだよ、この無防備な顔は。

そう考えてベッドわきから呆れのこもった視線を向ける、けど。

なぜだかその光景に、どこか既視感を覚えた。



「………」



なんだ、ろう。

いつ、どこで、今と同じような状況を、体験したんだろう。

俺にはきょうだいも、歳の近い親戚なんかもいない。

だから……こんな状況は、初めてのはずなのに。


ぼんやり、目の前の寝顔を見ながらそんなことを考えていると。

彼女のくちびるが、小さく動いていることに気付く。

何気なく、その口元に耳を寄せた。



「……おかぁさん……」

「──、」



本当に小さな、消え入りそうなほどの呟き。

だけども俺はハッとして、すぐに顔を離した。

見ると、その閉じられたまぶたをふちどるまつ毛には、涙のしずくが光っていて。
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