さみしがりやのホットミルク
「………、」



俺はぎゅっと、こぶしを握りしめると。

そっと、壊れものを扱うかのようにそっと、彼女の髪を撫でた。

それから再び、佳柄の耳元に顔を近付ける。



「……大丈夫。佳柄は、ひとりじゃないよ」



自分の出せる、ありったけのやさしい声音。

ささやいたその言葉に、ふっと、彼女の表情が和らぐ。



「……うん……」



そうしてまた、すうすうと穏やかな寝息が聞こえ始めた。


俺は最後にもう1度そのやわらかな髪をなでてから、リモコンを操作して部屋の照明を消す。

それから床に敷かれたふとんに、からだをすべりこませた。


──きっと。

きっとこいつは、遠く離れて暮らす弟を、俺に重ねているだけ。

……だから、俺じゃなくても。

歳が近ければ、きっと、誰でもよかった。


そう考えて、少しだけ、胸が痛んだのには気付かないフリをして。

俺はふとんの中で、目を閉じた。
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