鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「いてっ、お前、乱暴だな」

「一人でナイトを気取らないでください。ずるい」

「・・・松本か。あのおしゃべり。まあでもお前にはいい機会になるだろ?それにお前は俺とも話したくないだろうしな」

「どうしてそんな風に決めつけるんですか?確かにあたしは逃げました。だけどもう逃げません。覚悟を決めました。工場も見学してきて仕事を今まで疎かにしていたことにも目が覚めました。だから、あたしは課長の下で働きたいんです」



あなたのそばにいたい。たとえ、あなたがあたしのことを好きじゃなくても。


こんなに不器用で優しくて可愛らしいあなたを諦めることなんてあたしにはできない。



「・・・俺さ、最近ネクタイの評判がいいんだ。誰かがくれたやつ、今までは選ぶこともなかったのに掃除のおばちゃんにも褒められるようになった」


「・・・あのネクタイのほうが・・・」



「俺は、好きだよ」




ああ、この人はどこまであたしの心をかき回せば気が済むんだろう。見えないからって人差し指をあたしの唇に当てて甘い言葉を吐く。



肝心な気持ちは何一つ言ってくれないのに、あたしには極上のセリフを吐いて離してもくれない。唇にそっと指先が触れただけなのにあたしの心臓は早鐘を鳴らすんだ。
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