鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
家に着いた瞬間、冴子さんが泣いていた。そして、お父さんは黙って冴子さんの肩を抱いている。課長は、向かい側に座って、うつむいていた。


やっぱりこの胸騒ぎは間違っていなかった。今から聞かされることは、決して嬉しい事なんかではない。そう覚悟を決めて、そっと課長の横に座った。



「・・・ごめんね、美晴。僕、胃がんかもしれないんだ」


涙の止まらない冴子さんの肩を抱いたまま、お父さんが告げた。頭が真っ白になった。お父さんが胃がんかもしれない?体が震える。それに気づいた課長はギュッと私の手を握ってくれた。


嫌だ、信じられない。聞きたくない。




「ここ最近、胃の痛みが酷くて今日、救急で病院に行ったんだけど近日中に胃カメラを受けて欲しいと言われたんだ。週明けにでもすぐ病院に行って胃カメラを受けてこようと思ってる」



「ま、待ってよ。胃がんって決まったわけじゃないんでしょ、お父さん。だったらそんな決めつけたような言い方しないでよ!」


まだ、それだけじゃあ確定とは言えない。それなのに、どうしてそんなことを言うのと怒りの気持ちをお父さんにぶつけた。



「わからない。ただ今日は出来ないけどすぐにでも受けて欲しいと言われた。あまりいい状態ではないんだろうね。それで本題はここからなんだけど・・・僕は冴子と今年中には、結婚したい。悠貴くん、美晴、許可してくれるかな?」
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