鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「佐伯、ちょっといいか?」



次の週の金曜日、お昼休みに戻ると、チャイム前に課長が戻ってきていた。ふと目が合うと私を手招きで呼びつける。また、何かやらかしたのかと思いつつも、呼ばれて嬉しい。席を立ち、課長席に向かった。


琴美と話して余計に、自分の気持ちに加速度がついたものの、逆に意識して、変な行動ばかり取っていたから、こういう風に呼ばれるとどうしていいのかわからない。

チラチラと目で追いつつ、目が合えば逸らす。当然、唯野さんと比嘉さんにからかわれる。課長は変わらずなのに、私だけがおかしい。


「あのさ、明日の夜って、予定あるか?」


呼ばれただけで嬉しくて、怒られてもいいと思っていたのに、まさかのお誘い。しかも土曜日に。それだけできっと、私の頬は真っ赤なはず。それを気付かれないように、髪の毛で顔を覆って隠すも、きっと動揺は隠しきれてはいないはず。



だって、こんなに近い距離は久しぶり。恋は活力になるのか、幸い私、あの日から課長に怒鳴られるようなミスをしていない。



だから今週はずっと朝に挨拶をするのと帰りに挨拶をするくらいで、会話をすることもなかったから。怒られること以外繋がりがないというのもおかしいけれど、自分から用もないのに話しかけるなんて、余計に出来なかった。
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