鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ
「佐伯?」

「あ、は、はい。大丈夫です。何の予定もまったくありません」

あまりの緊張とドキドキについ、声はどもるし、カタコトになってしまう。目の前の課長は、不思議そうに私を見ているけれど、お願いだから気付かないで。

「そっか、良かった。じゃ、明日夜、飯でも行かないか?」

「ご、ご飯ですか?!」

「やっぱり、嫌か?」


少し伏せ目がちになり、気まずそうな表情を浮かべる課長。「喜んで!」となぜか敬礼して、大声を出した私。パッと顔を上げた課長は、とても笑顔で「なんだそれ」と声をあげて笑ってる。


「よしっ。場所決めて待ち合わせはまた連絡するな」


「は、はい。ありがとうございます」

「そうだ、今週はよく頑張っているな。久しぶりに怒鳴ることもなく、嬉しいけれど、ちょっと寂しい気もするよ」

ポンポンと頭を撫でて、課長は私に戻るように促した。何、今の。あの人、あんなキャラだったの?それとも、私を弄ぶためにキャラ作りしてる?どっちにせよ、振り回されてる私。

「なんなのよ、本当に、もう」

やっぱり、頬は触らなくても熱くなっているのがわかるし、見なくても真っ赤になっているのは、自分の席に戻ると、ニンマリと笑う唯野さんの顔を見れば、一目瞭然だった。
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