猿女の恋愛事情
「タスケテ…クダサイ…。」
私はいつもの様に望の机に寄りかかっていた。
それを今度はなんですかと宥める望。
「あのね、冬馬くんとかっけともう一緒に歩いてないの。逃げられるの。学校に行くときが冬馬くんと話せる最大の時間なのに。」
死にかけのか細い声でそういった。
「そういう時期が、来たんじゃないかな?」
望は大人っぽく腕を組んだ。
私は両手で頬杖をついてうんうんと頷いた。
「シシュンキってやつだよ!お母さんが言ってたの。男子が女子のことを意識して女子が男子を意識し始める時期のこと。」
〝シシュンキ″
小学生の私には大人っぽくてまだよくわからない言葉だけど、その所為で幼馴染の私たちが離れていっちゃうなんて…
「やだよう。ずっとみんな一緒にいたいのに。」
「しょうがないよ、恋歌。人類にオスメスつけて人格もたせちまった神様を恨みな?」
望の言うことの半分は私にはわからない。頭のいい望の言葉はいつも私には少し難しい。
でも私はその神様とやらが
ちょっとだけ憎いと思った。