やばい、可愛すぎ。
───幹久さん、この子は……どなた?
母は、俺のことを覚えていなかった。
すっぱり、何もかも、全部。
俺が生まれから、毎日欠かさずやってきた病院でのあの優しい時間も、撫でてくれた思い出も───すべてを、なくしていた。
いろんなものを無くして、母は、それでも俺に変わらない笑みを浮かべていた。
俺のことだけを、父のことも、祖母のことも、叔父のことも、いとこや、はとこのことも覚えているのに。
俺のことだけを───忘れてしまった。