やばい、可愛すぎ。


冷たく凍っていた、心がじんわりと溶けていくような、不思議な感じ。


「こんなとこにいたら、風邪引いちゃうよ」




ゆりが───すっと、前にやってきて


濡れて雫がほろほろと流れ落ちていく、黒髪を揺らしながら


目を細めて、口を綻ばせながら、言う。





「ほら……帰ろ?



 私たちの家に」






劈くような、雨の音がすっと止んだような気がした。



ああ、もう。

どうして───こいつは。


もう、気づいたときには止められなかった。


ぱたり、と傘が落ちていく音が聞こえる。再びふりかかる、雨。

けれどさっきみたいに、冷たくはない。





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