ファインダーの向こう
「峰崎埠頭か、また縁起でもないな」


『まぁ、そう言わないでよ、ようやく掴んだ情報だ。今まで黒い噂はあったけど、なかなかその現場が抑えられなくて“渡瀬会”もうまいことやってるってほんと感心しちゃうよ』


「それで、その情報とやらの出処は?」


『それがさぁ、僕の雇ってる情報屋が掴んだものだから確かだと思うんだけど、たまたまさっき無線で流れてきた情報らしくて、内部告発かもね』


「なんだそれ、もしかしたらハメられる可能性だって―――」


『んー無きにしも非ずだねぇ……でも、これは賭けみたいなもんじゃない? 新垣君はその賭けに失敗しちゃったみたいだね』


「は? なんだそれ……」


 なぜ新垣の名前がここで出てくるのか、逢坂には理解できなかった。


「まさか、あいつ……“渡瀬会”のエサになったんじゃないだろうな」


『情報屋がくれたどーでもいい情報だったんだけど、どうやら彼にも彼の事情があったみたいだねぇ……多分“渡瀬会”の方で口封じされてると思うよ、生きてるかどうかはわからないけど……だからついでに新垣君も回収してきてくれると助かるな~』


 電話の向こうでなければ一発殴りたいと、そんな衝動に駆られながら逢坂は額を掌で押さえ込むようにした。
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