ファインダーの向こう
 逢坂はカメラマンとしてはかなりの腕前で、他社から何件も写真の採用依頼が来るらしい、けれど、敢えて寿出版としか仕事をしないのは波多野と何らかの事情があるのでは、と沙樹はそんな思いを巡らせた。


(あぁ、やめやめ! 今考えてもこれからその人に会うんだし!)


 その時にどんな人なのかは自分の目で確かめればいい、と沙樹は言い聞かせて会社で波多野に告げられたルミと里浦の情報について思い返した。


 波多野の情報によると明日、ルミと里浦は二人揃って二十二時頃、同じ時間帯に仕事をあがり、プライベートタイムを取っているとのことだだった。二人の出現予定地は渋谷の道玄坂で、夜の道玄坂エリアといえば艶かしくネオン輝くラブホ街だ。そしてホテルに入っていく二人を抑えれば、完璧にホットスクープになるだろう。


 ルミと里浦はちょくちょく密会しているという噂を聞くが、今のところ決定的なネタが浮上してこない。マスコミの目を掻い潜って写真を撮られないように警戒しているということは、やはり先日見たルミと里浦らしき人物の車内キス写真は、当人だったのかもしれないと沙樹は推察せずにはいられなかった。
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