ファインダーの向こう
「GPSだけでよくここがわかったな」


 逢坂の瞳は暗褐色で、怜悧で険のある目をしている。沙樹はなんとなく、皆が口を揃えて難しい性格だと言っていた意味がわかったような気がした。


「新宿は歩き慣れてますから……逢坂さんは、なんでこんなところにいるんですか?」


「こんなところとは随分だな、ここは俺にとって一等地だ。呼んでもらっただけありがたいと思いな」


「なっ……」


 逢坂の不遜な態度と口調に、沙樹は閉口した。


(気難しくて、態度悪くてその上気まぐれ……最悪)


 沙樹が肩を落としていると、逢坂がふと話題を変えるように言った。


「お前、寿出版の契約ジャーナリストなんだろ? 前はどっかの新聞社とか雑誌社で仕事してたのか?」


「いえ……ずっとフリーでした」


「へぇ……」


 大抵のジャーナリストは新聞社や雑誌社で経験を積む。それからフリーになるケースがあるが、沙樹の場合は大学を卒業してからどこに就職するわけでもなく、雑誌社でアルバイトを転々としながら知識を積み、感性を磨いてきた。
< 36 / 176 >

この作品をシェア

pagetop