ファインダーの向こう
 深夜0時前―――。


 渋谷駅は平日でも休日でも人でごった返している。年末に向けて、忙しなく人が動いているのだろう。沙樹はバッグの中に忍ばせた望遠機能の優れたデジカメを確認し、ひとりでに高鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸する。まだ秋だと思っていたが、吐く息の白さに冬の気配を感じた。


 駅前の大型ビジョンは深夜でも動いていて、ルミが今CMしているスポーツドリンクの宣伝が流れた時には人知れずドキリとした。とその時、バッグの中の携帯が鳴り出して、沙樹は会社でもらった方が鳴っていると気づくと、その電話の相手を予感した。


「はい」


『あぁ、お前か、もう渋谷駅にいるな?』


 聞き覚えのあるその声は逢坂だった。何故この携帯の番号を知っているのか、と不思議に思ったが、元々波多野から渡されたものだと思い返すと愚問だった。


「はい、今ついたところなんですけど―――」


『里浦と神山が予定よりも早く動き出した』


「え……?」


『俺も近くにいるから、検索してこっちに来い』


「あ、あの―――」


 沙樹が声をかけようとした時にはすでに通話は途絶えていた。


(逢坂さんは、先にルミたちを張ってたの……?)


 沙樹は通話の途切れた携帯からGPSを立ち上げて、逢坂の居場所を確認した。


(いた……道玄坂のすぐそばだ)


 いつの間にか手に汗握りながら、沙樹は逢坂の居場所を脳裏に焼き付け、足早にその場所へ向かった―――。
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