ファインダーの向こう
沙樹は会社で黙々と仕事をこなし、外で食事を済ませて帰宅した。いつもならテレビをつけるのだが、今夜は一目散にパソコンの電源を入れた。
ルミと里浦が密会している事実、そして、里浦の婚約者がマスコミから圧力をかけられている事実、沙樹はキーボードの上で指を滑らせながら会社でやり残した仕事の続きを始めたその時。
(あ、そうだ! レコーダー)
あの夜、沙樹はルミと里浦の会話が気になって、レコーダーをセットしていたものをまだ確認していなかったことに気づいた。イヤホンを耳につけ、再生を押してみる。
すると―――。
『ねぇねぇ、隆治ったらぁ』
出始めにルミの甘ったるい声が聞こえてドキリとした。ルミは案外サバサバした性格でこんな媚びたような声を今までに聞いたことがなかった。好きな男の前ではどんな女でも可愛くなってしまうものだと、昔読んだ本にそう書かれていたのを思い出した。
(いけない集中なきゃ……)
沙樹は余計な邪念を振り払い、ルミと里浦の会話に神経をとがらせた。
『あぁ、わかったよ。ったく、ルミはほんと欲張りだな、この間渡したばっかりだろ。思い切り……べる……』
(え……?)
ルミと里浦が密会している事実、そして、里浦の婚約者がマスコミから圧力をかけられている事実、沙樹はキーボードの上で指を滑らせながら会社でやり残した仕事の続きを始めたその時。
(あ、そうだ! レコーダー)
あの夜、沙樹はルミと里浦の会話が気になって、レコーダーをセットしていたものをまだ確認していなかったことに気づいた。イヤホンを耳につけ、再生を押してみる。
すると―――。
『ねぇねぇ、隆治ったらぁ』
出始めにルミの甘ったるい声が聞こえてドキリとした。ルミは案外サバサバした性格でこんな媚びたような声を今までに聞いたことがなかった。好きな男の前ではどんな女でも可愛くなってしまうものだと、昔読んだ本にそう書かれていたのを思い出した。
(いけない集中なきゃ……)
沙樹は余計な邪念を振り払い、ルミと里浦の会話に神経をとがらせた。
『あぁ、わかったよ。ったく、ルミはほんと欲張りだな、この間渡したばっかりだろ。思い切り……べる……』
(え……?)