ファインダーの向こう
 先程、波多野と会話をしたばかりだといううのに、再び携帯が鳴った。

 沙樹はまた波多野だろうと思い込み、表示画面の名前も見ずに電話に出た。


「はい、そんなに急かさなくても夕方くらいには会社に顔出しますから―――」


『沙樹? ったく、誰と勘違いしてんの? 私よ、ルミ、神山ルミ』


「えっ!?」


 沙樹は慌てて携帯を耳から離して、表示されている名前を確認した。


『久しぶりに電話したのに、浮かない声ねぇ……元気?』


「あ、うん……ごめん、今さっき会社の人と電話してたから勘違いした」


『ふふ、沙樹らしいね。それよりさ、私の出演してるドラマ観てくれてる? 最近またスポーツドリンクのCM以来が来てさぁ、もう忙しいのなんのって……』


 毎週金曜日の夜八時に放送されているドラマに、ルミはヒロイン役で出演している。金曜の夜は比較的忙しいため、録画で撮り溜めをしてはいたがまだ全部観きれていなかった。


『そっかぁ、沙樹も何かと忙しいんだね。いきなりなんだけどさ、今夜時間ある?』


「え……?」
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