ファインダーの向こう
 展示会当日―――。


 沙樹はいつものように何が目の前に起きても写真が撮れるように、デジカメを用意して、高宮の案内通りに展示会会場へ向かった。


 今日は良く晴れていて、不思議と気分が高揚してくる。久しぶりの休日に沙樹は胸が踊った。


 電車を乗り継いでたどり着いたのは、都心から少し離れた展示施設で千人以上は収容できそうな場所だった。


(す、すごい……なんか、本格的)


 あまりにも予想以上だったため、沙樹は改めて展示会の規模の大きさを実感した。


 その展覧会は風景写真をテーマとしたアマからプロまでのフォトグラファーの写真が展示されていた。中には小学生が撮った作品もある。沙樹は物心ついた時から父親に写真の取り方を教わって、気がつけばそれが趣味になっていた。


 すると―――。


(あれ? 今のは……)


 人ごみの中、一際背の高い影が遠くで沙樹の視界を横切った。


(もしかして、今の……逢坂さん?)


 沙樹は考えるよりも先に、その影を追って駆け出していた。


「すみません、通ります」


 沙樹が人ごみを掻い潜って、ようやく開けた場所に出ると一人の長身の男がぽつんと一つの写真の前で佇んでいる。


「逢坂……さん? やっぱり逢坂さんだ」


 沙樹が声をかけると、その男はゆっくり沙樹に振り向いた。


「なんだ、お前か」


 逢坂は驚くでもなく、ただ平然としていた。


「逢坂さんも来てたんですね」


 沙樹は歩み寄って、逢坂が眺めていた写真に視線を移すと沙樹は目を丸くして驚いた。


 ―――タイトル 朝焼け 撮影者 逢坂透。
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