雨の日は、先生と

悲しいクリスマス

そして、楓とも仲直りできないまま、あっという間に週末を迎えた。

相変わらず、マエゾノさんは我が家に出入りしている。
おかげで母は、最近とても落ち着いている。

もちろん私に暴力を振るったりしない。
それどころか、最近では必要最低限の日常会話をするくらいになった。

マエゾノさんは、私に、私の母に、大きな幸せを連れてきてくれたんだ。


「ごめん、行ってくるね。」

「謝ることないさ!楽しんで来いよ。」


夕方に、マエゾノさんに見送られて家を出た。
居間から、ちらっと私を見た母も、きっと見送ってくれたんだろう。

幸せな気持ちなんてなくて、むしろ怖い。

最近、先生に会うのが怖くて仕方がないんだ。

大事な先生だからこそ―――




公園に差し掛かると、いつもの深いブルーの車が止まっているのが目に入った。

きゅっと胸が苦しくなる。

こんなにも愛しくて、苦しくて。



ガラスの窓を、コツ、と叩く。

どこか遠くを見ていた先生は、ふっと私に目を留めて、そして開錠した。



「先生、」


「こんばんは。いい夜ですね。」


「……こんばんは。」



そう言えば、今日は雨じゃないね。
先生と会うのは、いつも雨の日だったのに。

空には星が輝いている。

だけど、それを見ている余裕が、私にはあるはずもなくて。



「行きましょうか。」



ため息をつくような声で先生が言った。

小さく頷くと、車は滑らかに発進していった。
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