雨の日は、先生と
次の日も、また次の日も。
新野君は根気よく私に向き合って。

私も大分、彼とは打ち解けてきた気がする。

卒業を目前にして、こんなふうに友達ができるなんて思わなかった。
それも、異性の。


「なあ、唯!俺、来週が入試だから、今日で最後なんだ。自由登校来るの。」


「え!そうなの?こうちゃん、もう来ないの?」


「うん。……だからさ!食い修めしようぜ!」


「へっ?食い修め?」


新野君は、ニコニコと笑う。


「だからさ、ほら、この学校の学食でごはん食べること、もうないだろ?だから。」


「あ、そっか。そういえば、私行ったことないや、学食。」


「えー!お前それ、絶対損してるって!な、行こう!付き合ってよ、食い修めの儀式!」



その言い方が面白くて、思わず笑ってしまう。
ひとしきり笑っていたら、新野君は見たこともないほど嬉しそうな顔をして、私を眺めていた。



「唯が笑ったとこ、初めて見た。」


「え?そう?…いつも笑ってるよ、私。」


「違う。……そんな、ホントの笑顔。初めて見た。」



何故だかしんみりした声で言って、彼は急に、私の手を取った。



「行こっ!」



戸惑いながらも、私は彼についていったんだ。

拒んだりしなかった。


新野君の気持ちを、考えもしないで。



なんでかな。



ただ純粋に、大好きな人と友達と、一緒にいたいだけなのに。
どうして神様は、そっとしておいてくれないのかな。


卒業前にできた、最後の友達まで。


予期しない形で失うことになるなんて―――
< 97 / 119 >

この作品をシェア

pagetop