逃亡

ー5




「ーーーじゃあ、3ヶ月も出張で海外に?」
「そうなのよねー、行く筈の娘が出来ちゃってさ、急遽行ってくれって言われて、チャンスだから即答しちゃったんだよね。」

不動産屋さんのソファで、パンツスーツの彼女はアハハと、頭をかいた。

「3ヶ月も家を開けっぱなしにするのは気が引けてさあ、だって、物騒だし埃だらけになっちゃうでしょ。
だから誰か代わりに住んでくれる人を捜してんの。」
「それって、掃除とかが出来て……お部屋を管理出来ればいいんですか?」
「ん、そうだね。」
「私、住みたいです!!」
「ーーーえ?マジ!?いいの!!?」
「はい、えっと……」
「屋嘉部(やかべ)准(じゅん)だよ。」
「屋嘉部さん、言ったじゃないですか、チャンスだから即答したって。」
「アハハ、えっと、」
「谷口真那です。」
「真那ちゃん、気に入った!!
おじさん、この子に住んで貰う!!」
事務所に居るおじさんに向かって、屋嘉部さんは声をあげた。
直ぐに私に向き直ると、
「家賃は私が続けて払うし。」
「え?そんな、」
「いいの、いいの。私が借りてるんだし、帰るとこ無くなっても困るしね。」
「でも…」
「出張中は宿泊費ただだしーーーあ、光熱費は払ってね。」
「はい、勿論です。」
「後は、うちに行って話しよっか。」
屋嘉部さんはバックを手に立ち上がった。


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