彼女

戸惑い

「おはよ。」

水野と玄関で会ったとき、私は彼女に何も聞いていなかったことを思い出した。

「おはよ。あれ?今日は鷹野と一緒じゃないんだ?」

朝からうるさい鷹野が、今日は見えなかった。

「あーあいつは寝坊。待ってろって言われたけど置いてきた。」

なんだかんだ言って仲が良いのだと思う。

「あはは。私も今日はひとりなんだ。沙姫が寝坊して。」

上靴にはきかえた私たちは、賑やかな玄関を過ぎて教室に向かって歩き始めた。

「ねぇ水野、」

私が話しかけると、水野は耳につけていたイヤホンを外した。

「ん、何?」

「あっごめんね。なんか聴いてた?」

「平気平気。で?」

水野はそれを鞄にしまって、私の言葉を待った。

「受験勉強ってもうしてる?」

「うーんまぁ一応。」

あっさりと返されてしまい、私はため息をつくしかなかった。
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