君色キャンバス



昼間、小百合と話した時__祐輝は、自分の言った言葉を理解するのに、かなり時間がかかった。



『久岡が、好きだ』



何も考えておらず、不意に口から飛び出した言葉が、それだった。



すぅ、と言葉の意味を理解していくうち、祐輝は顔が熱くなるのを感じた。



その言葉が心にピッタリと当てはまった感覚もあった。



しかし、真顔でその事を小百合に言い放った自分が、信じられなかった。



__紗波と居る時は、鼓動が一気に速くなったのを思い出す。



でも、本当に好きなのか__それは、解らなかった。



(…まず、俺って…)



祐輝がアジサイを眺めながら、一人ポツンと呟いた。



「久岡のどこが、好きなんだ?」



自分で言った言葉に、顔が熱くなる。



言った事に頬を赤くしながら、祐輝は照れ隠しか眉を顰め、考えた。



顔が好きではないのは、ハッキリと断言できる。



最初 紗波と会った時には、特になんとも思わなかったからだ。



祐輝は腕を組んだ。



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