君色キャンバス
性格だろうか、と考えてはみるものの、シックリとはこない。
(つか、久岡の性格って…)
祐輝は頭を掻きながら、思う。
暗がりの中で、祐輝の真っ白な肌が少しだけ光った。
(…ハッキリ言って全く可愛げねえし、冷たい…というか、周りに興味がないって感じ)
祐輝が腕を放して足を組み、音楽室を見回した。
ピアノ、エレクトーン、バスキーボードなどの鍵盤楽器や、木琴、大太鼓などが所狭しと置かれている。
規則的に並べられた丸椅子。
(…顔でも性格でもねえなら、俺は久岡のどこが好きなんだよ)
その答えは、容易にはでない。
壁に貼られた楽譜の数々を見ながら、祐輝はふと思う。
(…久岡…隣の部屋で、絵でも描いてんのか?それとも…)
壁をたどって行くと、額に飾られたモーツァルトと目が合った。
__ゾクリ。
背中に、悪寒がほとばしった。
顔が引きつる。
祐輝はモーツァルトから遠く離れた椅子に座り、たまに額を見ながら、アジサイを一心に眺めた。
警備員が来る頃に、祐輝は音楽室に隠れた事を後悔しながら、奥の物置き部屋で眠った。