君色キャンバス
「…あぁ、そうそう」
窓の外を見て、祐輝が何かを思い出したように言った。
紗波は木々の彩りを眺めながら、祐輝の言葉に耳を傾ける。
「久岡、今日、あれ見に行こうぜ」
振り向くと、祐輝は美術室の扉へと向かって歩いていた。
“あれ”の意味が解らず、紗波は祐輝に問うた。
「…あれ、って、なに」
「来たら解るって」
祐輝は扉に手をかけると、紗波の方に笑いかけた。
「早く。学校サボろうぜ」
紗波はその笑顔を見ると、少し俯いてから、青いカーテンを閉めた。
美術室から出ると、祐輝の大きな身体の後ろに着いて行く。
紗波と祐輝が着いた所は、学校の裏にある駐車場だった。
「乗れよ」
あの時__八月十五日に乗ったバイクが置いてある。
紗波は、その黒いバイクの、祐輝の後ろに座った。
荒く規則正しい振動が気持ち良い。
前に乗った時と同じように、祐輝をギュッと抱きしめる。
「…じゃ、い、行くからな」
ブロロロロ、と音がしてバイクは駐車場を抜けた。
薄暗い道路に、一つの小さな明かりが灯る。