君色キャンバス
柳色



雲が出てきて、赤い夕陽はぼんやりと霞んでいる。



空の半分を雲が覆っていて、明日辺りは雨が降りそうだ。



夕陽が照らすその道を、紗波は右手に手提げのような物を持って、小百合と帰っていた。



「紗波…だから…流岡には関わっちゃ駄目だって。変な事されるかもよ?」



小百合が呆れとも疲れとも取れる表情で、紗波の方を見る。



白い肌が、夕陽で赤く染まっている。



その肌を見る度に、小百合は自分の肌を恨めしく見つめた。



小百合の肌は、薄い褐色で、白い肌は小百合の憧れだ。



「変な事はされない」



紗波が言い切った。



その言葉に、小百合は驚きを隠せない様子で、整った顔を見つめる。



「…え?紗波、流岡がどういう奴か知ってる?」



「知ってる」



紗波がすぅ、と息を深く吸う音が、隣を歩く小百合の耳に聞こえた。



「成績は下位五番の癖に悪知恵に関しては上位一番を遥かに越え、この二年間 授業に真面目に出た事は数える程のサボり常習魔、酒 煙草は当たり前、喧嘩は負け無し、教師を翻弄するイタズラ好きな悪魔」



無表情で淡々と言い放つ姿は、まるで何かの像の様だ。



終わってから、紗波がもう一度 大きく息を吸う。



「そういう事…だけど…」



小百合がその言葉を聞いて、盛大なため息を吐くと共に、その驚きを隠すために向こうを向いた。



紗波は基本、人に興味は無い。



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