君色キャンバス
(…え、なんで流岡の事、紗波がこんなに知ってる訳?)
チラチラと横目でその顔を見るが、その顔に表情は無い。
(なんで?流岡が?)
難問が一つ、小百合の中で増えた。
その難問はきっと、小百合にとってはどんな問題よりも難しいだろう。
他人に無関心の幼馴染が、ここまで流岡の情報を持っているのだから。
小百合は信じられない様な気持ちで、家路を急ぐ。
「じゃあね、紗波…」
家の前に着くと、小百合は鼓動が早まっているのを感じながら、紗波に手を振った。
さっきの驚きは、まだ収まっていない。
答えの出来損ないのような物は、帰り道に幾つか思いついた。
しかし、どれもシックリとこない。
(憧れ?友情?ムカつくから?…あ、もしかして)
そこまで考えて、小百合は自分の考えを否定した。
(恋なんて…紗波にはあり得ない…)
恋では無いのだろう。
紗波も、小百合や祐輝の前で、恋をしている素振りは見せない。
それに、事実、紗波は祐輝に恋をしたと思っていない。
小百合は悶々と頭を普段の倍は働かせながら、玄関に入った。
紗波が、隣のとなりの家に入るのが、玄関側の窓から見えた。