Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】
「……ジジイ」

「今さら何人。
 何十人殺しても、大勢に変化はない。
 それこそ、人でないから。
 正確に言えば、日本国民でないお前がここで死ぬのは、犬死にだ。
 ……捨てる命ならばわしにくれ。
 わしと共に生きるんじゃ!!!」

 ジジイの叫びに。

 俺は、目を丸くした。


 ……あんたが言うのか?

 老い、痩せさらばえた。

 明日死んでもおかしくないあんたが……

 俺が今一番欲しい言葉を吐くのか………!?



 あははははは!



 笑えた。

 その生命力と、外見のギャップに、本当に、笑った。

 強い。

 コイツは……強い!

 まぶしいほどに。

 涙を流し、身を二つに折って、大笑いする俺を、ジジイは怪訝に眺めている。

 そんな、ジジイを手で制して、俺は言った。

「……判った。
 貴様が、そう言うのならば、生きてもいい。
 共に生きよう」

「……残月」

「ただし。
 俺には、ここから一気に日本に飛んで帰れるだけの力は無い。
 たった一人であってもな。
 ……生きて日本に帰るつもりならば。
 敵の虜囚にならないと無理だ。
 ……相当の恥になるが、その覚悟はあるか?」
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