Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】
 ちいさくとも、立派な日本庭園のある、二階建ての旅館。

 そんな話を、工藤から聞いていた。

 ……しかし。

 俺の目の前にあるのは。

 廃材とトタンで作られた。

 見渡す限りの……ゴミの山だった。

 中途半端に広い敷地なのが災いし。

 隣近所の要らないモノが、全て、ここに集結しているような感じだ。


 確か、ここには、十六、七の。

 工藤の他に身よりの無い娘が、一人で住んでいたはずだった。

 その若さでは。

 旅館の女将を張るのは、無理だろう。

 まして、女一人。

 ここで、生きていくのは不可能、か……。

 様々なモノを放り込んできた雑のうが、急に、重く感じた。

 早苗に逢ったら渡そうと思っていた、せめてもの土産だったのに。

 俺をここまで運んで来てくれた、ジジィとの待ち合わせ時間もある。

 再び、来ることを、心に誓いながらも。

 思わず出て来た溜め息をついて。

 その場を離れようとしたとき。





 そのゴミの山から、モノ音が聞こえた。




 
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