ザァザァ・・・。


外は雨、少し肌寒い。
夏の前に誰が梅雨などを作ったのだろう。

僕はスーツに着替えビニール傘を差して駅へと向かった。

寝不足の人間に朝のラッシュは余計に疲れる。そんな人ゴミの中に揉まれている自分を小さく思えた。


会社の最寄駅に着くと・・・


ピロリロ。ピロリロ。


携帯電話が鳴った。

ディスプレイには表示がない。


「はい。神山です。」


お客様からの電話だと思った僕は電話に出た。


「神山くん?私、葉子」


聞き覚えのある声だった。
いや、忘れるはずがない声だった。


「神山くん昨日はごめんね。」


そう、今日の僕が寝不足なのは、この葉子のせいである。


「わたしね、わたし」


昨日の夜から降り続いた雨で出来た水溜まりには、僕が映り込んでいた。
まるで鏡の様に。


そんな映り込む自分を見て、僕は思い出していた。昨日の夜の事を。
そして、今の僕になるまでの経緯を・・・

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