サヨウナラ(アイシテルside祐)


「読んで貰えるか?」



「私が読むなんて……」



「亜美に読んで欲しい」



俺の言葉に一瞬戸惑った亜美は、涙を拭い大きく深呼吸をした。



「祐。私には貴方の存在がすべて。貴方の側では笑っていられる。だから、これからも沢山の人を笑顔にさせて。祐にはそんな力があるんだから。私は祐の胸でひっそりと見守っている。このクロスに思いをかけて」



亜美が紙切れを読み終えると、部屋の中がシーンと静まり返る。



お互いに口を開けないでいた。



時計の針だけがカチカチと時を刻む中、俺たちはどのくらいこうしていただろう?



由梨絵……



俺の時計の針は何年止まっていた?

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