妖勾伝

<6>

息をつく間も無く、化け猫の鈎爪が鼻先を掠む。




それは、三人の間を裂く様に、激しく地面に叩きつけられていった。











前方に倒れ込みながら、瞬時に二つの太刀を構えるレン。


アヤはとっさに、突っ伏したままの珀の躰を抱きかかえると、すかさず化け猫から逃れる様に背後に飛びすさった。











大きく、
揺れる大地。

地割れを起こしながら、濛々と砂埃を舞い上げる。







澱む視界を仰ぎながらレンはその瞳を細め、アヤの姿を追った。






全く見えないアヤの姿に、レンの胸がざわめく。



「アヤっ!
無事かーー?!」















フラフラと、
薄闇の奥で揺れる影。


無事を報せる、いつもの飄々としたアヤの身振りに、

レンはホッと、その胸を撫で下ろした。











そんな、レンの背後。

崩れ落ちてゆく、
醜悪な感覚。



返り見ると、音を立ててもげ落ちてゆく様に、化け猫の躰がグラリと歪む。










絡み付く闇を必死に留め、化け猫は言葉を吐き出した。










「許さん……

レン、
お前だけは、何があっても許さんぞ…」








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