変わり者同盟
教室へと戻ったら、私が戻ったことにすら気付いてないように、楽しげに喋っている3人をちらりと見た後、自分の席に向かった。


私の席は、窓側の後ろから2番目。久流君の席は、私の席の真後ろだったりする。

すももちゃんが私に目をつけたのは、この、席の近さもあるのかもしれない。


私としては、憧れの人の真ん前は、嬉しいけど・・・変に緊張もしちゃうから、実を言うと微妙だったりする。


お弁当箱が入っている白い、ユリの柄の巾着を取り出した。

その中から、水色に青の小花柄のお弁当箱を出す。


教室へ戻る途中で手を洗ってきていた私は、静かに手を合わせた。

「・・・いただきます。」


教室ではほとんどの人が昼食を食べ終え、喋ったりじゃれたりしているから、1人で手を合わせているのは私しかいない。

けれど、昔から影が薄い私を気に留める人はいない。


私はパカッとお弁当箱の蓋を開け、箸を持った。

卵焼きを口に入れる。


・・・・・・美味しい。

私は、少しにやけた。

今日も、上手くできたみたい。

少し、心が明るくなる。


私は、お弁当を自分で作っているから、上手くできると嬉しくなるんだ。

私のささやかな楽しみ。


私の家は、共働きをしていて、お母さんもお父さんも忙しいから、家事は得意。

だけど、お弁当の出来が上達していってるのが分かると、心が弾む。
凄く単純だと思うけどね。



・・・でも、今日の卵焼きは本当に上手くできた。


「ふふっ」

私は、どうせ誰も見てないだろうと思い、笑った。


――そうしたら。



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