変わり者同盟
愛おしい思い出だと、断言できる。



「――本当、悪かったね。
勝手に、久流和真に話して。」

その声に、私はフッと現実に戻る。


美術準備室の中。
目の前には、すまなそうに俯いて立っている大河内さん。

私は大河内さんの肩に手を乗せて、微笑んだ。


「いいのよ。
和真の言う通り、和真には知る権利があったんだもの。」

「でも、もしかしたら、あんたのとこに、色々聞きに来るかもしれないんだよ?いいのかい?」


心配そうな大河内さんを尻目に、私は微笑を広げた。


「あら。来てくれるなんて、嬉しいわ!」

「・・・・・・あんたの思考回路、ぶっ飛んでないかい?」

「私の思考回路は正常よ。

だって私は後悔なんてしてないもの。
彼を愛したことも、和真を産んだことも、ね。」


大河内さんは、じっと私を見つめた後、ハァーッと、ため息をついた。


「あぁ、あんたはそういう女だったね・・・。

でも、いいのかい?本当に。

知らないほうがいいことも、あるだろう。」


尚も不安そうに言い募る大河内さんに、私は笑みを消して、言った。


「えぇ。知らないほうがいいことも、勿論あると思うわ。

けど、知りたいと望むのなら、教えなくてはならないとも思う。

私は、母親なのだから。」


大河内さんは、私の答えを聞くと、ふっと肩の力を抜いた。


「ま、それもそうか。

頑張りなよ――小野真由美。」



私は、強気ににっこりと笑った。






ねぇ、和樹(カズキ)――。


今日、あなたと私の子供が

私達のこと、知ったみたいよ。




そう、心の中で、囁きながら。







―小野真由美side end―
< 78 / 140 >

この作品をシェア

pagetop