This is us -2
「…小田切さん?」
佐々木くんが病室から出てきた。
「なんか、入りづらくて…ごめんね」
「あ、聞こえちゃった?恥ずかしいな」
そう言って笑顔を見せるけれど、佐々木くんも泣いていたのだろう。
瞳が赤く染まっていた。
「余計なお世話だって分かってたんだけどさ、なんか悔しくて」
「…悔しい?」
「二人はあんなに幸せだったのに、いきなりこんなことになっちゃってさ…」
私は佐々木くんに買ってきたコーヒーを渡して、小さく首を横に振る。
「しょうがないよ…ありがとう」
「優花ちゃんが、すごく心配してる。あたしの代わりにガツンと言ってこいって、言われてたんだ」
優花は今専門学校のテスト中で、色々と忙しいとこの前メールで謝ってきたんだ。
「気にしないでよ。でも、あたし…」
言おうか、迷った。
決めたとは言え、揺らいでいる自分がいるから。
「結城くんには、もう…会わないって決めたんだ」
「何言って…!!」
口にして、やっぱり辛いことだと改めて気づく。
「みんなにも、迷惑かけられないし、結城くんも、戸惑ってたし…」
薬指で輝くシルバーリングを、そっと撫でた。
「結城くんがあたしのことを忘れてしまっても、例え思い出さなくても、あたしは絶対に忘れない。ずっと、自分の中に思い出があるから。あたしは…無理に思い出させることは、できないよ…」
大事な大事な、結城くんからのプレゼント。
.