This is us -2


「…小田切さん?」


佐々木くんが病室から出てきた。


「なんか、入りづらくて…ごめんね」


「あ、聞こえちゃった?恥ずかしいな」


そう言って笑顔を見せるけれど、佐々木くんも泣いていたのだろう。
瞳が赤く染まっていた。


「余計なお世話だって分かってたんだけどさ、なんか悔しくて」

「…悔しい?」

「二人はあんなに幸せだったのに、いきなりこんなことになっちゃってさ…」


私は佐々木くんに買ってきたコーヒーを渡して、小さく首を横に振る。


「しょうがないよ…ありがとう」


「優花ちゃんが、すごく心配してる。あたしの代わりにガツンと言ってこいって、言われてたんだ」


優花は今専門学校のテスト中で、色々と忙しいとこの前メールで謝ってきたんだ。


「気にしないでよ。でも、あたし…」


言おうか、迷った。


決めたとは言え、揺らいでいる自分がいるから。



「結城くんには、もう…会わないって決めたんだ」


「何言って…!!」


口にして、やっぱり辛いことだと改めて気づく。


「みんなにも、迷惑かけられないし、結城くんも、戸惑ってたし…」


薬指で輝くシルバーリングを、そっと撫でた。


「結城くんがあたしのことを忘れてしまっても、例え思い出さなくても、あたしは絶対に忘れない。ずっと、自分の中に思い出があるから。あたしは…無理に思い出させることは、できないよ…」


大事な大事な、結城くんからのプレゼント。



.
< 25 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop