This is us -2



「どう?少しは思い出した?」

「優花ちゃん、そんなに急には…」


アルバムを見ながら、松川は色々な事を話してくれた。


「…いや、聞けて良かった」

「蓮ちゃん、無理しないでね?」

「あんた、さっきからうるさい!」


思い出したかと聞かれたら、イエスとは言えない。

けれど、瞳の奥深くに映し出される映像が何回かあった。


はっきりはしていないが、それは温かくて包みこまれるように柔らかな記憶。


「俺…遅刻しそうだったんだよな…あん時」

「遅刻?」

松川が怪訝そうに首を傾げる。


「バイクで事故った時…雨、降ってた」

「蓮ちゃん!!」


佐々木がぱあっと笑顔になって、興奮ぎみに俺の手を握る。


「よく分かんねぇけど、急いでてさ…」


そう言った瞬間、ヘルメットを手に取った自分が浮かんで。

「さとりと、何か約束があったんじゃないの?」


約束…


『…たい』



『美味しいものが食べたい』



「美味しいものが食べたいって…」



あいつの、声…。




.
< 32 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop