恋の扉を開けて

私は専務の元パートナーが気になって仕方がなかった。

以前専務から聞いたフルネーム以外の彼の情報が欲しかった。

試しにネットで検索したら、彼のＨＰを見つけた。

彼はカメラマンの視点から、様々な事柄を綴っていた。

風景の写真がメインのようだった。

世界中のものを国別に観ることができた。

私はしばらく眺めた。

どれも素晴らしく、その場にいるような感覚になった。

望遠で撮った遠くの景色ではなく、ごく近い目線のものばかりで、その多くがセピア色で表現されていた。

フルカラーでないため、色の濃淡を編集したように見えた。

もの哀しげな独特の雰囲気があった。

どういう人なのかしら？

私は少なからず興味を持ち始めた。

彼は独りで世界中を見て歩いたらしい。

何も言わずに専務を置き去りにして、ふらふらと写真を撮りに出て行った彼を専務はどう思っていたのか。

私には男同士の関係を解き明かすことはできなかった。

彼を理解できたら、もっと専務に近づけるのではないかと考え、彼の世界の履歴を残らず眺めた。