約束は森の中~導かれて~
 それにしても、
 イブは全然気づきません。

 眠りの呪文は思ったより
 効いているようです。



「俺の癒(いや)しの聖乙女(おとめ)」



 手を握り、
 眠るイブを
 名残惜しそうに見つめていましたが、

 やがて

 意を決したように立ち上がりました。



 呪文を唱えます。




「十年後、また会おう。
 約束は必ず守るから、楽しみにしておけよ」





 青年は不敵な笑みと共に、
 煙をかき消すように、いなくなりました。



 
 後に残ったのは、

 何も知らず、

 ぐっすりと眠るイブだけでした。
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