不完全な魔女
ふと、ディルバがそうつぶやいた。


「あ・・・・・そういえば・・・」


「カリフはお父さまから何かきいてる?
妖精族の王子が襲って来てるなら、妖精の森に秘密があるのかしら?」


「ちょ、待てよ。じゃあ、おまえをトイレに追い詰めたアレはどこから沸いたんだ?」


「魔法の国でのことはわかりませんが、こちらの世界で人間には無害に等しいウィルスを人間でない部分を持っていない者を捜しだして感染させるって至難の業じゃないですか?」


「そういえば・・・ジェミオ、さすがするどいわ。
妖精や魔法使いの世界だったらとにかくどんどん感染させればいいのに、こっちで見た目人間で中身が人間でない部分を持ってる人を捜すなんて・・・手間がかかりすぎる。

時間をかけて捜すか?狙われる相手は決まっているか?この人は人間じゃないってすぐにわかってしまう目を持っていないと手間がかかりすぎるんじゃないかしら。」



「時間はかけたくないはずだろうし、すぐにわかる目っていうのもその目を持ってる者を捜すのにまた手間だ!
ってことは・・・狙われる相手が決まっている!!!それも学校で?

トイレに追い込まれた少女!?まさか。」


「わ、私が狙われてるんだ・・・どうしよう。」



「困りましたね。純粋種の魔女用の薬はできてない・・・。」


「ジェミオ、チェルミと俺ともう少ししたらやってくるヤツとで協力するから、一刻も早く魔法使い用の薬を仕上げてくれ。」


「じゃ、俺は学校でチェルミのボディーガードをする。
どこまでできるかわからないが・・・カリフと連携しながらやるしかない。

それと、俺が感染したときの薬をくれないか?ジェミオ。」



「あ、ディルバはもう薬はいらないよ。体内でとっくに抗体ができてるはずだから。」


「え・・・そうなのか?1回でいいのか?」


「ああ、そもそも人間には効かないって言ったろ。・・・!!あっ、もしや・・・もしかしてばらまいてるのは人間なのかも。

それにひとり、作ったとしたらと思えるやつがいる!」


「誰だ、なぜチェルミを狙ってくる?」


「ま、まぁまぁ・・・まだあくまで僕の推測ですが、毒の研究をしている男を知ってると言うだけですよ。
理由はわかりません・・・。

以前、発表があったときに人じゃないものには効くのにって言ってたことを思い出しただけなんです。
そのときは、人でないものがたくさんいるなんて思ってませんでしたから、気に留めてもいなかったけれど、今ならね。」


「とにかくその男の行動も調べなくてはな。」



いつのまにか、すっかり仲間になってしまったジェミオの引っ越し早々大変な1日が起きたのだった。

そして、カリフとディルバは家こそ違うが、出入りすることになりそうだ。

チェルミはディルバのことを超能力ありの人間だと思っていたが、妖精属だったことにまだ驚きの色を隠せなかった。

しかし、もう妖精族だの魔法族だの言ってられない、この世界ではどっちもよそ者になるのだ。



「私たちはもう休まないと・・・先生、べつに無理しなくていいからね。」


「俺は無理なんかしてないぞ、それに妖精属の血をひいていることもわかったしな。」


「でも、我々のことは・・・」


「わかってる。例え、君が故郷に帰ってしまっても、僕は・・・担任だから・・・な。」


「うん・・・。」




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